第97章 一手残しておく

飢えと疲労がいっぺんに押し寄せる。左腕の傷は、いまだ鈍く疼いていた。

つま先で、骨が半分だけ残ったウサギの死骸を軽く蹴り、エヴァはセバスチャンへ視線を向ける。

「……あなたの蛇は?」

「川辺に捨てた」セバスチャンは淡々と言う。「あれを抱えていたら走れない。重量は30kgを超える。行動の妨げになる」

エヴァは目を閉じ、深く息を吸った。

崖っぷちまで歩いていき、黒々と沈む海を見下ろす。波が岩礁を叩きつけ、どおん、と腹に響く轟音をあげる。潮風が髪を乱した。

「水もない。食料もない。負傷者は発熱してる」エヴァは現状を並べる。絶望ではなく、事実の列挙と計算だけが声に宿っていた。「変異モンス...

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