第123章

刃の閃きが生んだ一瞬の隙間で、アランは半ば転がるようにネロを引きずり、後ろへ退いた。焦った手が乱暴に伸び、ネロの身体を探る。

顔を伏せた、その刹那。

周囲の音が、まるで世界ごと切り落とされたみたいに消えた。

聞こえるのは、自分の荒い息だけ。

それから、鼓膜の奥を駆け回る心臓の暴走。

――ない。

アランの指先は傷口を掴まなかった。刃はネロの体をかすめ、シャツを裂いただけだ。

ほんの一瞬のはずなのに、やけに長い。

アランは息を吐き、顔を上げた。

その途端、押し戻されるように音が帰ってくる。銃声、怒号、足音。まるで何十人もが同時に引き金を引いたみたいな、混濁した轟き。

「当たっ...

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