第57章

第二巻(上)『誘拐』

裁判所の正門前。

人々は足早に行き交い、車はひっきりなしに出入りする。いつも通り、せわしない光景だった。

広場を挟み、裁判所の正面にカメラを担いだ肩がわずかに揺れる。レンズの前で記者が背後をちらりと確かめ、マイクを掴んだ。背後には威容を誇る正門と、何百段も続く石段。

「午前10時、特別陪審が開廷し、昨年のドナリー麻薬事件の審理が始まります」

「ドナリーは長年、ニューヨークの主要な麻薬ネットワークを取り仕切る存在と見なされてきました。ニューヨーク州警察が1年3か月にわたり追跡を続け、関係者はついに全員逮捕。主犯のマイルスは今年3月末、取引の現場で身柄を確保されて...

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