第87章

しばらくして、ハサンがそっと扉を押して入ってきた。

「お、お前……どう片づけたんだ?」

ハサンが訊く。

ネロはハサンを見た。

「片づけるって、どうしろってんだよ」

――みんな気づいてたのか。

自分が毎回ここへ降りてくるたび、給水機の横の席に座って、ちょうどオネのほうを向く位置を選んでいたこと。そんなことに、当の本人だけが馬鹿みたいに気づいていなかった。

「帰らせたのか?」

ハサンが小声で言い、外を顎で示す。

「荷物まとめてるぞ」

「いや。夜、話すって言った」

ネロは椅子から立ち上がり、部屋をハサンに明け渡すように身を引いた。

ハサンはネロの顔に浮いた疲れを見て、眉を寄...

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