第98章

バーカウンターの脇で、あの少年は酒を一杯手に取り、ふらりと横へ流れた。

栗色の髪の男が、さりげなく品定めする。少年は急いで外へ逃げる気配がない。グラスを口に運びながら、同時に人の波の中を目で探っている。

次の獲物探しか――男は一瞬で意図を見抜き、口元だけで冷えた笑みを作った。

このバーは近くに観光名所があり、よそ者が多い。財布の中身も厚い。こういうスリが寄ってくるには、うってつけの場所だ。

今この瞬間、ほとんどの客は酔いが回り、目に入るのはステージの歌い手とショー、グラスの酒、隣の連れだけ。暗がりで起きている小さな攻防など、知る由もない。

人を「標的」として眺めているのは、スリと、...

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