第7章
俺を招き入れると、玲さんは背後で滑るように音もなくドアを閉めた。
彼女がドアに備え付けられた監視モニターに、ちらりと視線を走らせたのを俺は見逃さなかった。続いて、彼女は靴箱から真新しい客用のスリッパを取り出し、俺の足元にそっと置く。
「どうぞ」
言われるがままスリッパに履き替え、彼女の後に続いてリビングへと通された。この家に来るのは二度目だが、空気はまるで違っていた。前回は三人での賑やかな夕食だったが、今夜は、マンション全体が時計の針の音さえ聞こえそうなほど静寂に包まれている。
玲さんは優雅な手つきで緑茶を淹れてくれた。ふわりと立ち上る茶の香りが、室内の空気に溶けていく。
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