第116章 デマを流す

氷上匡悟の言葉が終わるより早く、執事が入ってきて一礼した。

「お客様がお見えです」

「誰だ」

執事は片瀬澄乃を一度だけ見たが、口にはしなかった。

片瀬澄乃はすぐ察する。――匡悟おじさんの私用だ。彼女は立ち上がり、静かに頭を下げた。

氷上匡悟も、執事の顔に浮かぶ焦りを読み取ったのだろう。引き留めはしない。

「俺も帰国したばかりでな。何かと立て込んでいる」

「分かってます、匡悟おじさん。今は私たち、どちらもJ市にいますし。これから会う機会はいくらでもあります。今日のところは気にしないでください」

「……ああ」

氷上匡悟は執事に顎で示した。

「送ってやれ」

短い再会は、そ...

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