第119章 勝負

「勝負なら受けて立つ! 誰がビビるかよ!」

マキシーは引き下がらなかった。

先にマキシーが『月光』第一楽章を弾き、ほかの生徒たちもそれぞれ得意曲を披露していく。

そして片瀬和也の番が来た。彼はピアノの前へ進み、小さな指で鍵盤にそっと触れ、最初の一音をやわらかく落とす。

指先から咲いたのは『別れの曲』だった。技巧の要求は高く、感情表現はなおさら深い。だが五歳の片瀬和也は、音の粒を一つも崩さず、別れの痛みと未練を、胸の奥にしみ込ませるように弾き切ってみせた。

弾き終えた瞬間、練習室は息づかいしか聞こえないほど静まり返った。

マキシーの目には明らかな衝撃が浮かぶ。それでも強がって吐き捨...

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