第140章 因縁

瀧本博雄は大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。胸の奥で荒れていた波を、どうにか鎮めようとしているみたいに。すぐには答えず、窓辺へ歩いていくと、外の重たい夜の闇をじっと見つめる。

長い沈黙ののち、彼は振り返った。旧い怨みから滲んでいた鋭さは薄れ、代わりに、歳月をくぐった者だけが持つ大らかさと、どこかの諦観が顔に宿っている。

「氷上家が当時、筋を通さなかったのは事実だ。うちも損をした。突き詰めりゃ三日三晩でも片がつかん。だがな――俺は、分別くらいはつく」

瀧本知暁の前まで戻り、まっすぐに言い切る。

「親世代の因縁は、親世代のもんだ。澄乃に罪はない。あの子は片瀬家みたいな環境で育って...

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