第141章 いびき

扉の向こうから、天地がひっくり返るような大いびきが、いきなり轟いた。

「ぐおー……ぐおおおお……」

片瀬澄乃の指先が、扉板から数センチのところで固まる。こめかみに浮いた青筋が、ぴくりと跳ねた。

……これ、わざとでしょ!?

諦めきれず、扉越しに声を少し張る。

「彩葉? 彩葉、開けて」

けれど返ってきたのは、さらに大きく、遠慮のないいびきだけだった。

瀧本知暁は腕を組み、近くの柱にもたれて余裕の表情を崩さない。口元の笑みが、もう隠しきれていなかった。

あとでちゃんと礼を言わないとな。

澄乃が扉の前で立ち尽くし、どうにもならずに困り果てている。その「今夜はどっちにも転べない」みた...

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