第146章 感謝はいらない

「えっ……大丈夫? 先生呼んでくる!」

片瀬澄乃が、目に見えて慌てた。

「いい……」

瀧本知暁は熱を孕んだ視線で彼女を捉えたまま、かすれた声で言う。

「君が……一回、キスしてくれたら……たぶん……痛くなくなる」

片瀬澄乃の身体がびくりと強張った。頬にさっと朱が差し、視線が泳ぐ。

病室の空気が、ぴたりと固まったみたいだった。

数秒。気まずさと、甘い緊張が絡み合う沈黙のあと。

彼女は小さく息を吸い、目を閉じて身を屈めると――瀧本知暁の青白い頬に、ちゅ、と素早く触れるだけの口づけを落とした。

柔らかな感触は一瞬で過ぎ去る。

羽で心臓をくすぐられたように、瀧本知暁の胸が跳ねた。口...

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