第152章 本物と偽物

氷上悠雅は胸の奥がひくりと跳ねた。だが、頬に貼りつけた笑みだけは崩さない。ほどよく首を傾げ、わざとらしくもない程度の疑問を滲ませる。

「瀧本さん、それはどういう意味ですの? 華源バイオテクノロジーはれっきとした企業ですし、緋色との間にあるのは、あくまで通常の商取引上の揉め事ですわ。うち森田家は――」

「緋色に手を出すな」

瀧本知暁が言葉を断ち切った。

「緋色に手を出すってことは、片瀬澄乃に手を出すってことだ。片瀬澄乃に手を出すってことは――俺、瀧本知暁の一線を踏むってことになる」

ゆっくりと一歩、前へ。

たったそれだけで、空気が一段重くなる。目に見えない圧が、部屋の隅々まで押し広...

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