第155章 龍兄

彼女は苛立たしげに目を閉じ、吐き捨てるようだった声をわずかに落とした。

「……あなたのお母さまに、ほんの少しだけ情があるから見逃してあげるのよ。でなければ今日は森田家から叩き出していた。これが最後。いい? 外で私に、森田家に、二度と面倒を持ち込まないで。もしまた不埒な真似をしたと分かったら――容赦しない」

「はい、伯母さん! 肝に銘じます! 二度としません、本当に……ありがとうございます!」

片瀬結希は矢継ぎ早にうなずいた。けれど胸の奥は、怨みと屈辱でどろどろに煮えたぎっている。

――全部、片瀬澄乃のせい。

――全部、白井奥さんのせい。

あいつらが、私をここまで惨めにした。

森...

ログインして続きを読む