第156章 誘拐

大川沙織が出ていった直後、龍兄は吸い殻を木のテーブルにぐりぐりと押しつけ、隅で息を殺していたヒョウ、サル、クロクマの三人へ指をくいっと曲げた。

「仕事だ。ひとり攫って来い」

三人は寄ってきたものの、指示を聞いた瞬間、揃って一歩引いた。

片瀬澄乃を――誘拐?

あの、界隈の人間ですら名前を知っているデザイナー。瀧本知暁が公に恋人だと認めた女。

ヒョウはふくらはぎが痙攣するのを感じ、声が裏返りそうになる。

「龍兄……片瀬さんは、瀧本知暁が命みたいに大事にしてる相手っすよ! 手ぇ出したら、死にに行くようなもんです。瀧本家が本気で――」

言い切れなかった。

龍兄は相変わらず、左手の親指...

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