第20章 彼氏

片瀬澄乃は問われて、一瞬きょとんとした。次いで、鼻で笑う。

「私がどこへ行こうが、いつ出ようが、あなたに関係ある?」

瀧本知暁はそれ以上追及しなかった。ただ、じっと彼女を見た。

その眼差しは、底の見えない淵みたいに深い。探るような色と、そして本人すら気づいていない、かすかな期待。

「家まで送る」

片瀬澄乃は何か言い返しかけたものの、その有無を言わせぬ視線に、言葉を呑み込まされた。

……もういい。

どうせ今は他に誰もいない。瀧本知暁がどれほど気に食わなくても、とりあえず生きた人間ではある。今の彼女はただ、この息の詰まる場所から一刻も早く離れたかった。

車内では、ずっと無言だった...

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