第220章 男を奪う

二人がもうしばらく言葉を交わしたのち、初田愛菜はようやく腰を上げた。服の皺をさっと整え、視線の先――片瀬澄乃のいる方へと歩き出す。

わざわざ「偶然」を演出して、あの子に見せつけるためだ。

このネックレスを。瀧本知暁の心の中で、いったい誰が大事なのかを。

そのころ片瀬澄乃は格闘場で白井舞と組み手の最中だった。汗が頬を伝い、額の細い髪を濡らしても、目は一点に据えられたまま。踏み込みも、捌きも、切れ味が落ちない。動きは無駄なく、鋭い。

初田愛菜はわざと歩く速度を落とし、格闘場の脇にある観客席へ腰を下ろした。訓練を見学しているふりをしながら、時折、髪をかき上げる。

そのたびに首元の宝石がき...

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