第33章 譲っていただけませんか

前谷琴音の胸にあったのは、別の思いだった。ここ数年、片瀬澄乃はたったひとりで三人の子どもを育ててきた。その苦労がどれほどのものか、分かっているのは自分たち二人だけだ。

だからこそ、心の底から願っていた。片瀬澄乃を甘やかし、慈しみ、ちゃんと大切にしてくれる誰かが現れてほしい、と。

正直、前までは瀧本知暁のことが気に入らなかった。けれど、あの人は自分から片瀬澄乃を助けに行き、病院まで連れていった。それだけで、人として悪くないのは分かる。しかも、子どもたちの実の父親かもしれないのだ。

もし本当に、片瀬澄乃が瀧本知暁を受け入れる気になったとしても――それはそれで、悪くない。

前谷琴音の励ます...

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