第55章 蟹

午後、瀧本知暁は会社の用事を片づけると、そのまま車で瀧本家の旧宅へ向かった。出発前には伊崎大輝に手配を頼み、プライベートアイランドから獲れたての蟹を空輸で旧宅へ送らせている。おじい様は昔から、これが大好物だ。

車が門をくぐった瞬間、玄関先で執事が待っていた。

「お帰りなさいませ。伊崎さんのお手配の蟹、ちょうど先ほど届きまして……まだ元気に動いております」

知暁は短くうなずき、リビングへ入る。ソファには瀧本おじい様が新聞を広げていた。

「祖父さん」

おじい様は新聞を畳み、知暁を一瞥する。

「今日はどうした。珍しく暇なのか」

「最近は落ち着いてます。顔を見に来ました。さっき揚がった...

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