第82章 学校に送る

片瀬澄乃は身体をこわばらせ、反射的に身を引こうとした。

けれど彼は、彼女の頬にかかった言うことを聞かない髪を指先でそっと払っただけだ。指の腹が、目の下に残る青い影をかすめる。

その微かな熱に、澄乃の耳の奥がじわりと熱くなる。

「ちゃんと確認できたなら、それでいい。次に知りたいことがあるなら、直接俺に聞け。伊崎大輝より、俺のほうが詳しく話せるだろ?」

距離感の狂った仕草と物言いに、澄乃の胸の警報がけたたましく鳴った。

片瀬奈菜を抱きしめたまま、慌てて一歩引こうとする。

「瀧本社長、恐れ入ります。伊崎さんは――」

「その名前を、もう出すな」

瀧本知暁が遮る。軽く身を屈め、澄乃の耳...

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