第86章 夕日

瀧本知暁は、彼女の姿などとっくに視界に捉えていたのだろう。口元に「やっぱりな」とでも言いたげな笑みを浮かべる。

「こそこそ帰ろうとした? 片瀬ディレクター。まさか俺が、18時まで待つと思った?」

片瀬澄乃は足を止めた。頬が一気に熱くなる。

早く上がった同僚たちもこちらに気づき、好奇の視線が飛んでくる。ひそひそ声まで混じった。

「え、あれ瀧本社長じゃない? 片瀬ディレクター迎えに来たの?」

「……あの二人、絶対ただの関係じゃないよな」

片瀬澄乃は、瀧本知暁が人前で余計なことをしないかと気が気じゃない。早足で彼の前まで行き、声を落とした。

「先に乗って。話は車の中で」

瀧本知暁は...

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