第99章 必要ない

アシスタントに案内されて白井奥さんのオフィスへ足を踏み入れると、片瀬澄乃はソファに腰掛けた白井奥さんの姿を一目で捉えた。

深い色の服に身を包んだ老婦人は、穏やかな眼差しの奥に、揺るぎない威厳を宿している。

白井奥さんは隣のソファを示した。

「澄乃、来たのね。さあ、座りなさい。さっき会議室では、面倒なことに巻き込まれなかった?」

澄乃は一瞬だけ目を瞬かせ、すぐに悟る。外の様子は、もう耳に入っているのだ。腰を下ろし、声を落とした。

「大丈夫でした。別の会社のディレクターの方にお会いして、少しお話ししただけです」

白井奥さんは懐かしむように澄乃を見つめ、目尻を柔らかく細めた。

「あな...

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