第5章
ハサミがチョキンと心地よい音を立て、新聞から最後の一文字を切り抜いた。
午前三時にもなると、我が家のキッチンテーブルは脅迫状工場の様相を呈していた――散らばった雑誌の切り抜き、スティックのり、そして私が丹念に作り上げた「指名手配」のポスターで埋め尽くされていた。
『求む、水原美咲、年齢25歳、院長の娘』と、映画に出てくる内部告発者がやるみたいに、わざと不揃いな文字で綴った。『死亡に至る医療過誤の疑いあり。情報提供者に懸賞金1000万』
ポスターの一枚一枚から、私が描いた彼女の似顔絵がこちらを見返していた――あの計算高い目、誰もが騙された、あの完璧な微笑み。私以外の、誰もが。
午前七時半、私は真実を告げるポスターの束を抱えて病院に到着した。早番の勤務が始まったばかりで、医療スタッフたちがコーヒーを片手に気だるげな会話を交わしながら、ぽつぽつと出勤してくるところだった。
絶好のタイミングだ。彼らが気を取られている隙に、この告発の種を建物中に蒔いて回れる。
まずは正面玄関ホールの掲示板から始めた。最初のポスターの四隅を撫でつけて貼り付ける私の手は、意外なほど震えなかった。早めに出勤してきた看護師が数人通り過ぎたが、朝の仕事に集中していて私の作業には気づかない。
「何これ?うちの病院にこんな名前の人いないけど」と、一人の看護師が訝しげにポスターを読んだ。
「見て、まだあるわ。誰がこんなものを貼ったのかしら?」別の看護師が、私がたった今貼り付けたポスターを指さした。
私は何気ないふりを装って作業を続けたが、心臓が激しく鼓動し始めた。
「奥さん、許可なくここに掲示物を貼ることはできませんよ」背後から警備員の声がした。
私は冷静を装って振り返った。「危険な医療過誤の容疑者を探しているんです。患者の安全に関わることです」
「ご協力いただいて、こちらへ来てください」警備員は手を伸ばしてきたが、私は素早くその脇をすり抜けて廊下の雑踏へと姿を消した。
看護師の交代時間に乗じて、産科病棟に紛れ込んだ。廊下は消毒液の匂いに満ちていて、絵麻が生まれた夜を思い出す。だが、悲しみに浸っている場合ではない――私にはもっと重要な使命があるのだ。
「ここに水原美咲っていう危険な女医がいるから、気をつけた方がいいですよ。あいつは子供に危害を加えます」と、ベッドで休んでいる妊婦に囁いた。
その妊婦は目を丸くして私を見つめた。「え? 何のことだか……」
「奥さん、当院の患者さんではありませんね。勝手に病室に入らないでください」一人の看護師が私を見つけた。
私は興奮して彼女の方を向いた。「この人たちを守ってるのよ! 水原美咲がこの人たちの子供に危害を加えるのではないかと心配だ! 私の絵麻を殺したみたいに!」
看護師の表情が険しくなる。「奥さん、落ち着いてください」
だが、どうして落ち着いていられよう? 刻一刻と、妊婦たちが命の危険に晒されているというのに、誰もが何事もないかのように振る舞っている。
午前十一時、私は空っぽの診察室を見つけた。中の超音波診断装置や監視モニターは静かに作動していたが、その精密機器が、私には突如として邪悪なものに見えた。
「これもみんな、あいつに汚染されてる。もっとたくさんの子供たちが殺される」と機械に呟きかけ、私は作業に取り掛かった。ケーブルを引っこ抜き、手当たり次第にボタンを押し、水原美咲が『細工した』これらの装置を破壊しようと試みた。
突然、甲高い警報音が鳴り響き、私はパニックに陥った。
あいつの悪事をこれ以上続けさせてはならない。
「なんてこと!何をしてるんですか!この機械がいくらすると思ってるの!」看護師長が血相を変えて飛び込んできた。
私は正義さながらに彼女の方を向いた。「水原美咲はこれを使って、私の子を殺したのよ!」
昼には、午前中の混乱から立て直すべく、病院のカフェテリアに足を運んだ。昼食をとる人々でごった返している。私は隅の席に座り、入口をじっと見つめていると、ついに健太が女性の同僚と入ってくるのが見えた。
あれは、彼女だ。銀縁メガネの女。水原美咲。
怒りと、我が意を得たりという感情が入り混じり、胸が締め付けられた。やはりいた――私が疑った通り、また二人で一緒にいる。並んで歩く様子、気取らない親密な会話、そのすべてが必要な証拠だった。
私は立ち上がった。椅子が床に擦れて、甲高い音を立てる。カフェテリア全体のざわめきが一瞬止まったように感じた。私はまっすぐ二人のテーブルに向かい、空いていたテーブルの上に登った。
「みんな見て!これが森田先生よ!子供を亡くした妻を裏切っている!」私はテーブルの上から叫んだ。
カフェテリア全体が一瞬で静まり返り、すべての視線が私に集中した。久しく感じていなかったこの注目――これこそ私が求めていたものだった。
「院長の娘、水原美咲と不適切な関係にあるのよ!」私は銀縁メガネの女をまっすぐ指さし、大声で続けた。
健太が驚いて立ち上がった。「恵美!降りてこい!何をしてるんだ!」
周りの人々が囁き始めた。
「何が起きてるの?」
「彼女の言ってること、本当なのかしら?」
だが、私がさらに真実を暴露しようとしたその時、警備隊長が現れた。「奥さん、ご協力いただいて、こちらへ来てください」
「離して!私は真実を暴露したいの!水原美咲は人殺しよ!」私はもがいたが、警備員は私よりずっと力が強かった。
健太が説明しようとした。「彼女は私の妻なんです。病気なんです。助けが必要なんです」
野次馬たちが携帯電話で写真や動画を撮り始めた。「早く、これを録画して。すごいことになってる」
カフェテリアから引きずり出されながら、私は力の限り叫んだ。「あなたたち、みんな買収されてるのね! 真実はいつか明らかになる!」
午後二時、警備員に病院から付き添われて外に出された後、怒りと挫折感で呼吸するのもやっとだった。
だが、これはほんの始まりに過ぎないとわかっていた。今は私を黙らせることができても、真実は必ず浮かび上がる。
その日の午後六時、健太が帰宅した時、彼の顔は今まで見たことがないほど険しかった。
「恵美、今日自分が何をしたかわかってるのか? 病院中がその話で持ちきりだぞ!」彼の声は怒りと絶望に満ちていた。
私は正義さながらに彼を見つめた。「真実を暴露したのよ!水原美咲は自分の罪を償わなきゃ!」
「病院にそんな名前の医者はいないんだ!わかるか?誰も!」健太の声は震えていた。
「みんなで彼女を庇ってるのね!院長の娘だから!」私の声も震えているのを感じた。恐怖からではなく、怒りからだ。
「医者に診てもらう必要がある、恵美。助けが必要なんだ」健太の声が必死になった。
「私は病気じゃない!病気なのはあなたたち共犯者の方よ!」
私は居間を飛び出し、寝室のドアを背後でバタンと閉めた。彼がどう思おうと勝手だ――私は真実を知っている。
コンピューターを開き、地元のニュースメディアの連絡先を探し始めた。病院が真実に耳を貸さないのなら、世間が聞いてくれるだろう。
「こんにちは、国際友愛病院の重大なスキャンダルを告発したいのですが……」心の中の怒りと決意を一つ一つの言葉に乗せ、私は入力し始めた。
「院長の娘である水原美咲は医療過誤の疑いがあり、病院全体がそれを隠蔽しています……被害者の家族として、私は世間に真実を知らせる義務があります……」
送信ボタンをクリックし、地元の報道機関三社にメールを送った時、奇妙な満足感が心を満たした。私はノートパソコンを閉じ、暗闇の中で微笑んだ。
明日には、街中が水原美咲の本当の顔を知ることになる。






