第9章

恵美の手紙を見つけてから三日後、私は病院の理事会と向かい合って座っていた。場所は、かつて誇らしげに自分の研究成果を発表した、あの見慣れた会議室だ。

今、重要なのはこの手にある辞表だけだった。

「森田君、本気なのか? こんなことで君のキャリアを……」松本亮平の声は、そこから先を続けられずに途切れた。

「彼女がいなければ、私のキャリアに意味なんてありません」自分でも驚くほど、しっかりとした声が出た。

永井先生が身を乗り出した。「長期休暇を取るという手もある。これまで築き上げてきたもの全てを投げ出すことはない」

「彼女を見つけるのにどれだけ時間がかかるか分かりません。不確かな状況で...

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