第107章 彼女は全身に棘を帯びている

七海がその書類を手に会場を出た瞬間、全身の力がふっと抜けた。

中身にどんな穴があるのか、細かく確認する気はない。水原母の人柄を信じたわけでもない。

ただ自分の目的のために、今だけ歯を食いしばって飲み込んだ――それだけだ。

ところが、会場を離れようとした矢先。風間悠希の姿が、彼女の段取りを乱した。

いつから入口に立っていたのかも分からない。七海は、彼がいつ会場を出たのかすら気づいていなかった。

まして、どうして自分の行く手を塞ぐのかなど――。

「風間社長、何かご用ですか」

風間悠希は答えない。視線だけが、七海の手元の書類へ落ちる。

「お前、水原母と……何を取引した」

誤解だと...

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