第123章

水原美月は、皿の上のはちみつケーキをじっと見つめたまま、顔色を沈ませた。

彼女は幼い頃からはちみつだけは口にしない。水原家では末端の使用人ですら知っていることで、キッチンがこんな取り違えをするはずがない。なのに使用人は「奥様が召し上がりたいと」と答えた。――そんな言い方、今まで一度もなかった。

以前の母は、美月の好みを本人以上に気にかけていた。朝食はいつだって美月仕様。母が何を食べたいかなんて、後回しだったはずだ。なのに今、「奥様が食べたい」はちみつケーキが食卓に置かれている。それは声にならない宣言だった。何かが、静かに変わり始めているのだと。

水原美月は箸を置いた。胸の奥が詰まって、...

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