第19章 違う彼女

七海が口を開いた途端、会場中の視線が一斉に彼女へと集まった。

澄みきった声。夏の谷あいをさらさらと流れる小川みたいに清冽で、ラブソングを歌えば感情はたっぷり、それでいて技術も一切揺らがない。

二階の個室にいる面々にも、その歌声は当然届いた。

「やば……めちゃくちゃ上手い。どこからだよ」

「見て! あれ……七海じゃない?」

驚きの声が上がるなか、透明なガラス越しに見下ろすと、ステージの七海は光を全身に浴びていた。まるで天から舞い降りた天使みたいに。

「モンスーンは海を越え、空の彼方へと吹き抜けていく」

「自由と感情、どちらの方がより手放しがたいのだろうか」

不意に跳ね上がった高...

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