第32章 彼女は、やっていないと言った

電話を切ると、七海は服を羽織って家を出た。

出がけにもう一度、山下さんへ念押ししてから――ようやく胸のつかえを下ろす。

水原家へ戻ると、リビングは明々と灯っていた。

外からでも分かる。中に、人が大勢いる。

水原家の三人と、風間悠希。

彼らは水原美月を中心に囲み、まるで守護者のような陣形を作っていた。

そこへ自分が足を踏み入れたところで、余計者にしか見えない。

それでも帰ってきたのは、仕方がない。

水原母の手の中に、七海の「持ち物」がある。

執事が扉を開けた。七海だと分かると、顔色が露骨に曇る。

まあ当然だろう。水原家は、最初から七海を歓迎していない。

七海は気にも留めず...

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