第36章 彼女に対して、彼は欲望を抱く

七海がこんなにも卑屈な声を出したのは、これが初めてだった。自分を塵の中にまで押し潰してでも、ただ——風間悠希に、放してほしいだけ。

疲れすぎていた。

そして、もう本当に、こんな暮らしを続けたくなかった。

七海の瞳に滲む耐え忍ぶ色を見て、風間悠希は静かに立ち上がる。

「……すまない」

その言葉に、七海は思わず固まった。

しばらくして、ようやく声が戻る。

「……今、何て?」

見つめ返され、風間悠希はゆっくりと言葉を継いだ。

「今回のことは水原美月が悪い。俺が代わりに、お前に謝る」

胸の内が、急に複雑にざわついた。けれど七海はすぐに冷めた顔に戻す。

「風間社長は、私が告発する...

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