第63章 選べるのは、どちらか一つだけだ

夏川直希は、風間悠希の指示で用を取りに来ただけだった。

普段この時間帯は、風間爺さんの休みを邪魔しないよう、自分からノックすることはしない。ところが今日は、ドアを開けた瞬間、七海と山下さんが話している場面に出くわした。

しかも間がいいというか、彼が入ったタイミングで、山下さんがちょうど「七海が渡した薬」のことを口にしたところだった。

夏川直希はほとんど反射で問い返していた。

「……薬?」

家に戻る前、七海に「絶対に外では言わないで」と約束していたのだろう。山下さんは間髪入れずに言葉を繕う。

「もちろん若奥様が病院で受け取ってきてくださったお薬ですよ」

夏川直希が耳にしたのは最後...

ログインして続きを読む