第七章

 和沢グループ株式売却会。

 重厚な扉を押し開けると、そこでは「一家団欒」という茶番劇が繰り広げられていた。

 父は甲斐甲斐しく紀ノ川蘭に蜜柑の皮を剥いてやり、その傍らには、純白のシャネル風スーツに身を包んだ和沢雨子が楚々と座っている。事情を知らない者が見れば、これこそが理想的な親子三人と信じて疑わないだろう。

「おお、ゆる子か」

 父は私を見るなり、張り付いたような笑みを浮かべた。

「座りなさい。いま紀ノ川さんと話していたんだがね、株が売れたら皆でヨーロッパへ旅行に行こうかと。お前も気晴らしに来るといい」

 紀ノ川蘭は白々しく遠慮してみせる。

「あら、でもゆる子さんは私や雨子...

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