第107章 あんたを助けるのは彼女たちへの裏切りだ

植田丈二の顔を見た瞬間、清水若菜の表情がさっと曇った。

まさか――こいつ、本当に療養所まで乗り込んで騒ぎを起こすなんて。

昨日、カフェでグラスを叩きつけた。あれで少しは大人しくなると思っていたのに。

甘かった。相手は筋金入りの無頼漢だ。

胸の奥で渦巻く怒りを押し殺し、若菜は足早に詰め寄った。

「……どうして、ここにいるの」

植田丈二は椅子にもたれ、顎をしゃくるようにして見上げてくる。挑発そのものの目。

「おいおい、可愛い娘ちゃん。昨日、俺が何て言ったか忘れたのか?」

口の端を吊り上げ、冷たく笑う。

「まさか、口だけだと思ったわけじゃねえよな?」

若菜の顔色が一段と悪くなる...

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