第117章 彼の不安感

温井有紗は胸の奥がきゅっと酸っぱくなった。それでも甘えた声を作り、口を開く。

「賢次、用がなくちゃ電話しちゃダメなの?」

名取賢次の声には、温度が一切なかった。

「雑談する気はない。用件を言え。じゃなきゃ切る」

「切らないで!」

温井有紗は慌てて叫ぶ。

深く息を吸い込み、わざと秘密めかして声を落とした。

「賢次。さっき送った写真、見た?」

受話器の向こうが、すっと静まった。

名取賢次は何も言わない。ただ、スマホを握る指に力がこもる。

――見たに決まってる。

温井有紗はそう確信し、内心でほくそ笑んだ。

だから、さらに火をくべる。

「清水若菜と、あの男……どういう関係な...

ログインして続きを読む