第13章 彼らが口づけを交わすのを見る

名取賢次の顔色が変わった。ほとんど反射で手を伸ばし、彼女を強引に引き戻す。

「気でも狂ったのか!」

温井有紗はそのまま彼の胸に縋りつき、体を震わせて泣いた。涙に濡れた目で見上げ、かすれた声で問う。

「賢次……本当に、清水若菜のこと好きになったの?」

名取賢次の体がぴくりと強張る。彼は有紗を見ようともせず、声だけが冷たく距離を置いていた。

「若菜の心にいるのは俺じゃない。あいつには、あいつが大事にしてる相手がいる。……それに俺とお前は、三年前に終わった。もう元には戻れない」

「有紗。ほかの連中は騙せても、お前は分かってるはずだ。今の俺たちは、ただの利害関係だ。これ以上踏み込むな」

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