第16章 招かれざる来客

名取賢次は胸の奥がむっと詰まり、あらかじめ用意していた言い訳を口にした。

「前の会社にまだ片付いてない案件があるだろ。状況をいちばん分かってるのはお前だし、ずっと担当してきた。……本当に手を引くつもりか?」

仕事を盾にして、彼女を縛ろうとしている。

清水若菜は目を閉じ、胸の底で煮立つ苛立ちを押し込めた。

「また今度にする。今日はもう会食が入ってるの」

「会食?」名取賢次の声が一気に尖る。警戒が滲み、喉がきゅっと締まったみたいに硬い。「誰とだ」

「社内の、仕事の席」若菜は淡々としている。そこに薄い嘲りが混じった。「何。昔は私をあなたの横に置いてたくせに、商談にも連れて行かないし、立...

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