第17章 彼女のような良い人

これは――あまりにも露骨な裏切りだ。

名取賢次は婚姻を裏切った。それだけじゃない。三年間、彼を守り続けた清水若菜まで踏みにじった。そんなこと、許されるはずがない。

なのに温井有紗は、場の空気が凍りついていることなどまるで気づいていない様子だった。

彼女は親しげに箸を取り、賢次の好物を一口ぶんつまむと、そのまま口元へ運ぶ。甘ったるい声で言った。

「賢次、あーん。私が食べさせてあげる」

名取賢次は顔を背け、箸先を避ける。苛立ちを隠さない声。

「自分で食う」

「やだぁ」温井有紗は引かない。拗ねたように唇を尖らせる。

「私が食べさせたいの。最近ぜんぜんさせてくれないじゃん。食べてくれ...

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