第28章 忍耐の限界

清水若菜は、田中の気を遣うようなおずおずとした態度に気づくと、これ以上困らせたくなくて、そっと頷いた。

「ええ」

そのひと言に、田中はぱっと顔をほころばせた。

田中は慎重に清水若菜を支えながら階段を下り、そのまま中庭へ連れていく。

春の陽射しがやわらかく身を包み、あたたかな風が頬を撫でていく。庭いっぱいに咲き誇る花々は目にも鮮やかで、見渡すかぎり華やかな色に満ちていた。

清水若菜はその景色を見つめ、張り詰めていた気持ちがようやく少しだけほどけていくのを感じた。まなざしの奥には、久しく浮かばなかった淡い笑みさえにじむ。

けれど――。

いつの間にか、ひやりとした風が不意に吹き抜けた...

ログインして続きを読む