第34章 拒まないで、いいですか?

名取賢次は食卓の前に座ったまま、訳が分からないという顔をしていた。

「……なんで俺が帰らなきゃいけないんだ」

九条辰哉はドア枠に肩を預け、コートを腕に掛けたまま、口元だけで笑う。

「名取社長。こんな夜更けに女性を煩わせるのは感心しませんね。彼女は退院したばかりです。休ませてあげるべきでしょう」

名取賢次の顔色が、すっと沈んだ。

「お前が来られるなら、俺が来られない理由がどこにある」

「俺は仕事の話で来ただけです」

九条辰哉は平然とした声のまま、名取賢次の表情をひとつなぞるように視線を巡らせる。

「名取社長が何のためにいらしたのかは……俺には分かりませんけど」

名取賢次は胸の...

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