第51章 彼女にはもう祖母はいない

名取賢次は、ぐっと胸を締めつけられた。

もう何も聞かなかった。黙ったまま清水若菜を横抱きにすると、そのまま路肩に停めてあった車へ足早に向かう。

若菜は彼の腕の中で小さく震え、指先で彼の胸元をきつく握りしめた。唇がかすかに動き、掠れた声がこぼれる。

「おばあちゃんは大丈夫……昨日まで、あんなに元気だったもの」

けれど、それが自分をごまかす言葉にすぎないことくらい、彼女自身がいちばんよくわかっていた。

車は療養所まで、脇目も振らず走り抜けた。

若菜は車が止まるなりドアを押し開け、そのまま中へ駆け込む。足元はふらつき、今にも倒れそうだった。

名取賢次はすぐ後ろを追い、いつでも支えられ...

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