第52章 あの男は誰だ

祖母を見送るその日、空にはしとしとと細い雨が降っていた。

墓は古い生家の裏山、その中腹にある。すぐ脇には、祖母が何年も何年も口にしていた古い桜の木が立っていた。

桜の木も、もう年老いている。太い幹はどっしりと根を張り、雨に濡れた若芽は青く艶めいていた。

祖母の遺骨が掘られた穴へ納められ、土がひと掬いずつかけられていく。そうしてとうとう、清水若菜にとってこの世で最後の心の拠り所までもが、土の下に埋められてしまった。

彼女は黒いワンピースのまま墓前に立ち、傘も差さず、降りしきる雨をそのまま受けていた。頬を伝う雫は雨なのか涙なのか、もう自分でも見分けがつかない。

葬儀が終わったあと、清水...

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