第54章 もう離婚しない

清水若菜はこれ以上考えるのが怖くて、慌てて布団を跳ね上げるとベッドを降りた。裸足のまま廊下へ飛び出し、夜気に背中を撫でられながら外へ向かう。

裏庭に出た瞬間、視界に名取賢次の背中が入った。

石の腰掛けに座り、こちらに背を向けている。月明かりが広い肩を淡く縁取り、どこか寂しげに見えた。

清水若菜は、息をついた。

よかった。まだいる。私を置いて、どこかへ行ってしまったわけじゃない。

胸の中で暴れていた不安が、少しずつ鎮まっていく。若菜は深く息を吸い、足音を殺して近づいた。後ろからそっと抱きつこうとした、その瞬間。

賢次が電話に向かって、きっぱりと言った。

「……離婚はしない」

若...

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