第59章 彼の名前を呼んだ

夜になってから、名取賢次はようやく帰宅した。

主寝室の扉を開けると、部屋には暖色のベッドサイドランプがひとつ灯っているだけだった。

清水若菜はもう休んでいた。ベッドの端に身体を横向きにし、静かな寝息を立てている。

名取賢次は物音を立てないよう身支度を済ませ、湯上がりの清潔な気配をまとったまま、そっと布団に滑り込んだ。

身体がマットレスに触れた途端、清水若菜が熱を感じ取ったみたいに、無意識に彼のほうへ身を寄せる。

名取賢次はそのまま腕を伸ばし、彼女を抱き寄せた。

清水若菜はまどろみの中で、くぐもった声を漏らす。

「どうしてこんなに遅かったの?」

「ちょっと手間取ってな」

名取...

ログインして続きを読む