第64章 お前が好きなら、俺も好きだ

温井啓介は即座に警戒した。だが、温井有紗が続けて口にした提案は、その想像を軽々と飛び越えてくる。

「お兄ちゃん、清水若菜を落としに行って」

有紗は啓介の袖口をぎゅっと掴み、助手席から身を乗り出す勢いで迫った。目はまっすぐ啓介を射抜いている。

啓介は一瞬、耳を疑った。

「……何だって?」

「だから、清水若菜を落としに行けって言ってるの!」有紗は断言するように言い切る。「ああいう小さな家の出って、基本お金に弱いじゃない。うちは名取家ほどじゃなくても、向こうからしたら十分でしょ。お兄ちゃんだって顔は悪くないし、ちょっと優しくしたら、すぐ引っかかるって」

言えば言うほどテンションが上がっ...

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