第65章 一歩も引かない

清水若菜はそのメッセージを見つめ、指先を画面の上で一瞬だけ止めた。

明日の夜はたしかに予定がない。けれど、名取賢次に時間があるかどうかは分からない。

だからすぐには返さず、立ち上がって寝室を出た。

書斎では名取賢次が書類に目を通していた。足音に気づいて顔を上げる。

「賢次、明日の夜って空いてる?」

清水若菜はドア枠にもたれ、淡々と言った。

「一緒にご飯、行かない?」

食事という言葉に、名取賢次の脳裏へ今日レストランで彼女が口にした話がよぎる。

途端に警戒が走った。声にまで棘が混じる。

「誰とだ」

張り詰めた顎のラインを見て、清水若菜は思わず苦笑する。

「名取承吾。今日、...

ログインして続きを読む