第68章 彼女を後ろにかばう

名取賢次はふう、と息を吐いた。剣のような眉がきゅっと寄り、いかにも困りきった顔になる。

「今回の案件は名取グループと温井グループの共同事業だ。温井側が彼女を視察に寄こしてきた。……そしたら、基礎の掘削坑の縁がいきなり崩れてさ。俺と彼女がいちばん外側に立ってて、後ろの人波に押されて、危うく落ちそうになった」

言葉を切り、賢次は唇を噛む。

「俺を突き飛ばして逃がそうとして……落ちたのは、彼女だった」

「助けられたんだ。だから、まず病院に運ぶしかなかった。変に勘ぐるな。距離を置くって言っただろ。必ずそうする。今日は……ただの事故だ」

清水若菜はその説明を聞き、数秒だけ黙った。

視線を落...

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