第73章 妻が家出する?

その頃、本邸にいる名取賢次のスマホが、唐突に鳴り響いた。

彼は画面を一瞥し、迷いなくスピーカーに切り替える。

受話口の向こうから秘書の声が飛び込んできた。

「名取社長。やはりお読み通りです。名取家を出たあと、温井有紗が例の作業員を追いかけ、運転手と一緒に痛めつけました。ですが警察が間に合い、二人とも現行で確保され、連行されています」

清水若菜は思わず名取賢次を見た。驚きが、そのまま瞳に浮かぶ。

正直、あの作業員がまだ屋敷にいた時点で、彼女は聞きたかった。ここまでの話なら、なぜその場で通報しないのか。どうしてわざわざ帰してしまったのか、と。

あの時は、名取賢次が本当に情けをかけたの...

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