第82章 琴の音がのびやかに響く

目の前の老紳士は彼女の問いに答えず、抑えきれない昂ぶりを滲ませたまま、独り言のように呟いた。

「……似ている。あまりにも、よく似ている」

清水若菜は堪えきれず、重ねて尋ねる。

「私が……どなたかに似ている、ということですか?」

老人はその言葉で、ようやく自分の失礼に気づいたらしい。はっとして背筋を正し、咳払いをひとつした。

その時、千野教授がさっと前に出て紹介する。珍しく改まった口調だった。

「若菜、こちらは木村教授だ。国内の遺伝病学の権威で、この分野では右に出る者はいない。私など、足元にも及ばないほどの先生だ」

清水若菜は、そこでようやく腑に落ちた。

目の前の白髪交じりの老...

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