第83章 なぜ泣くのか?

玄関先には、ボディガードが詰めていた。

二人は左右に分かれて背筋を伸ばし、昨夜のようなことを二度と起こさせまいと、神経を尖らせている。

清水若菜が出てくると、ボディガードが慌てて声をかけた。

「奥様、こんな遅い時間に……ご用件でしょうか」

若菜は小さく首を振る。

「眠れなくて。少し外を歩きたいの。……一緒についてきてくれる?」

「もちろんです」

二人は即座に頷き、彼女の背後へ回った。近すぎず、遠すぎず。守るための距離を保ったまま。

若菜は、どこからともなく流れてくるヴァイオリンの音を辿って歩き出す。村の入口に立つ、大きなガジュマルの木のほうへ。

今夜は月が明るい。白い光が道...

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