第89章 彼女の想い

清水若菜はしばし沈黙し、胸の奥に言葉にできない感謝が込み上げた。

やがて、彼女は改まって頷く。

「はい。ありがとうございます、九条社長」

食事を終えると、二人で店を出た。

九条辰哉は腕時計に目を落とす。

「今は休暇中だろう。送っていくよ」

清水若菜が遠慮しようとした、その背後から聞き慣れた声が割り込んだ。

「結構です」

振り返ると、名取賢次が大股でこちらへ歩いてくるところだった。

清水若菜は目を瞬かせる。

「どうしてここに?」

名取賢次は彼女の隣まで来ると、当たり前のように腰へ腕を回した。視線だけを九条辰哉へ向け、薄い笑みを浮かべる。距離は近いのに、温度はない。

「ち...

ログインして続きを読む