第5章

 志保がようやく口を開いた。

「もう、いいじゃない。ね?」

 彼女は肩紐でシャネルの鞄を引き寄せて立ち上がり、歩み寄った。「彼が間違えただけよ。もう流しなさい」

 志保はつや消しの黒いカードを一枚すっと抜き、担当者の請求書の上に置いた。

「通して」

 担当者は、まる三秒、彼女を見つめた。

「三十八万四千円」

「通して」

 ピッ。

 承認。

 砂浜がざわめきで明るくなるみたいに沸いた。

「志保、やっば!」

「三十八万って、はした金かよ!」

 志保はカードを受け取り、笑って受け流した。「誕生月だからね。ちょっと奮発しただけよ」

 修平は転びそうな勢いで彼女のところへ駆...

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