第9章

 杖の音がホールの中央まで届いたところで、場内の照明が落ちた。

 部屋の真ん中、白いスポットライトが大理石を刺す。会員制クラブの顧問弁護士が書類フォルダを抱え、その円の中へ歩み入った。

 彼はフォルダを開いた。

「遠藤宗介様のご承認により、以下の資産を本日付で全て移転いたします――本会員制クラブの創設者席、青葉台リゾートの所有権、ならびに船舶『飛鳥』」

 一拍、間を置く。

「移転先は、遠藤芹奈様」

 沈黙。間ではない種類の沈黙だった。

 志保の顔色が、濡れた紙みたいに白くなった。

 修平の手からシャンパンのグラスが滑り落ち、雪に落ちたような柔らかい音でカーペットに沈んだ。

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